同人誌やCG集で稼ぐ人が増えている

同人作家がヒイヒイ言いながら原稿に追われる中、子どもたちのおもちゃを買い占める、これこそ転売屋の醍醐味…。

歪んだ喜びを見出すんじゃありませんよ。同人作家も転売屋も世界の隅っこにいる存在なんですから。

で、コミケが終わると同人誌の転売が話題になって、転売屋叩きといういつものレジャーが始まるわけだ。

そんな鮎漁解禁みたいに叩かれても困りますがね。自由市場とリバタリアニズムに関しては何度か触れたので置いておいて…

今回のテーマはズバリ「同人誌は儲かるのか?」です。

最近ではダウンロード販売がメジャーになってきて、印刷コストがかからないことからそっちで大金を手にする人もいるとか。

どちらもやってみた経験から、どれくらい売れたら、どれくらい儲かるのか?を考えたいと思います。

印刷コストはかかるが現物が残り、イベントでも売ることができる「同人誌」

まずは転売屋におなじみの同人誌。当サイトでは同人誌の転売はおすすめしておりませんが…

今でもクソの如き行列に並んでペラい本を買い求める人の列は途切れることはないよ。

データが主流になったとしても、現物を手元においておきたいという人は決して消えません。

ま、たしかにね。ちょっと漫画読みたいときなんかにいちいちデバイス開かないといけないの面倒じゃん。漫画本ならすぐ開けるし。そこは気分の問題かな。

以前にも少しご説明しましたが、同人誌は最初の金型を作るコストが高いだけで、部数が増えるほどにコストが劇的に下がります。

逆に金型を作らないで業務用のプリンターで出力するのがオンデマンド印刷。早さも圧倒的だし1部でも作れるけどランニングコストがかかり続けるから大部数だと損しちゃうよ。

なので最近では本文のみオンデマンド、表紙は活版印刷という組み合わせ料金が増えてきましたね。それを踏まえて印刷代の相場を見てみましょう。

表紙の紙質だの箔押しだの中とじ平綴じ特殊加工だの細かいことは色々あるんで、一番標準的なやつね。
しまや出版のスタンダードセットにリンク


一般的に同人誌はB5サイズ、30P前後が多いですね。するとこの表で32P200冊刷るとなると54860円(外税)。1冊あたり274.3円

6万円か…ちょっときついから100部で刷っちゃうと、44780円。一冊あたりのコストが447.8円と随分割高になるね。転売屋の感覚で言うとたくさん刷っとけって言いたくなるけど。
同人誌の相場
ページ数×10円(端数切り上げ)
プラス表紙カラーで100円
32P表紙カラーなら500円程度が相場になります。
ページ数×10円(端数切り上げ)
プラス表紙カラーで100円
32P表紙カラーなら500円程度が相場になります。
単に印刷コストだけで計算できないという考え方もあり、価格を決めるのは作家側ですが、買う方が負担に感じない程度の相場、という意味でよく使われる式です。

ん?一冊500円で売るとして、100部だったらギリギリプラス、200部だったら4万円のプラス!

こうしてみるとなかなかの稼ぎに見えますよね。問題は200部がそんな簡単に捌ける数字なのかどうか。

う、うまかったら捌ける、下手だったら捌けない!

ま、半数以上のサークルがコミケで100部捌けないという数字は覚えておいたほうがいいかと。

それを言っちゃあおしまいよ!

ですが一回の地方イベントで200捌けることは別に無理な数字ではありません。ちょっと上手いくらいでも十分に可能ですよ。

しかし売るためにはイベントへの参加費、交通費、旅費、何より本人の人件費がかかることをお忘れなく。

トントンじゃ割りに合わない…まさに好きだから続けられる趣味だね。
同人誌、CG集などのデータ販売は儲かるのか?


これに対してDLsiteなど各社が始めたダウンロード販売サービス。こちらは現物が残らないものの、制作費用以外のコストが一切かからないことで最近人気が出ています。

先生!漫画描いてるときに食べたバナナは経費に含まれますか!?

描かなくても食べるでしょう普通。

どうしてもバナナを描く必要があった…いやらしい意味で。
https://www.dlsite.com/home/(DLsiteへリンク)

印刷代がかからない、一部からでも売れる、在庫が残らない、ずっと販売できるといい事ずくめ。

でも本は残らないでしょ?そんなに売れる?
私も何冊かデータ販売してみたところ、素人でも100部は読んでもらえることがわかりました。クオリティにもよりますが、今の若い人はめちゃめちゃ絵が上手いのでもっと売れると思います。一昔前の「神」レベルが今の若い人の標準的なレベルだと思ってくれて間違いないです。

マジか…じゃあデータ販売のほうが遥かにウハウハじゃん!

と、ここで忘れてはいけないのが手数料。DLsiteを例に取ると、550円で販売した場合、275円が手数料として取られます。

ええーーちょっちょっと待ってよ…紙の本だと100部を刷って50000円でしょ、データだと100部売れて手数料27500円…あれ?めっちゃ安い?でも常に半額ずつ取られ続ける…。

しかし実際に印刷しているわけではないのでコストは何もかかっていないわけでしょう。取られ続けるって言い方はおかしい。

そもそもがこんなに多くの人が買いに来るプラットフォームに自分の作品をデータ販売できるというだけで手数料払う価値があるわけですよ。これがビジネスの形。

お、おう…まあ確かに原稿データ送るだけでpdf作って読める形にしてサポートも全部やってくれてその手数料だからね。そこまで体制整えるのが大変だったと思うけど。

あとはお客さん側がダウンロード販売を受け入れる環境になったということでしょうね。10年以上前からこの形態はありましたけど、なんとなく胡散臭い感じで現物がないと駄目みたいに言われてましたからね。
データ販売は二次創作からオリジナルのコンテンツ力が求められる時代へ


なんのかんの言って最初に50000円位かかる同人誌はハードル高いよね。これで儲けたいってなったら覚悟がいるよ。

そこで元手ゼロのダウンロード販売が脚光を浴びていますが…実は問題点も指摘されています。

問題点…紙に直接ちんちんを擦り付けられないとか。

どんな特殊プレイですか。ではなくて、二次創作の同人誌をデータ販売していいものかどうか、という点です。

い、いまさら同人誌のアリ無しを議論すんの!?

あくまで同人誌は著作権的にはアウト。それを黙認してもらっているという立場です。しかし印刷代がかからず永続的に儲かり続ける同人誌はそろそろ版元から訴えられるかもしれません。

まあ…訴えようと思えばいつでもいけるってことだからね。

DLsite様でも作品名やキャラ名は伏せ字になっています。それが著作権的にどれほどの効果があるかは存じ上げませんけどね。

いや、でも二次創作が駄目だったら同人誌は全部だめになるじゃん。今だったら皆マシュの寝取られ本読みたいわけじゃん。


なんでピンポイントな性癖を知ってるのか。それはそれとして最近ではオリジナルの作品で一山当てる人も増えてきましたよ。

マジか…同人誌でオリジナルなんて絶対売れないのにな…。

読み手側にそれだけ準備ができてきたとも言えるわけでしょう。ツイッターに白ハゲお気持ち漫画を上げて何万リツイートって人もいるわけですから。

あんなのでリツイート増えてほしくない。

ありのままで映画の感想を書いたら実は自分以外の作家も同じ条件で仕事受けていた雪の女王とか。

アナ雪ステマ漫画は可愛そうだろ!

雪の女王なのに炎上とはこれ如何に。
最後に:制作にかかる労力を甘く見てはいけない

うーん。まあ数字に関してはそこそこわかったよ。じゃあ転売を止めてまで本格的に取りかかりたいかっていうと…ちょっとなあ…。

アルバイトの時給を1000円と仮定しましょう。原稿1ページにかかる時間は4時間として、32Pのコストは128000円。印刷代のかからないデータ販売だとしても、550円で販売して一部275円で128000円を回収するには…

466売って、やっとトントン!人気作家でもない限り466はキツイな〜

ま、それを達成できないのであればバイトでもしてたほうがマシ、ってことですね。

いや、でも1ページを2時間で仕上げて、月に2本描けたら…あるいは…。

400部売れる作品が月に64P描けるんだったらプロになりなさい。
というわけで、製作者側から見た「儲かるか儲からないか」というお話でした。
これを見てあっ何だ俺ならもっと稼げるじゃんとか、逆に割に合わないなとか具体的なビジョンが見えると幸いです。
もちろん、月に64P描き続けられてもプロにならずダウンロード販売専門でやってる方もいらっしゃるでしょうし、他の作品(音声作品など)を組み合わせている作家さんも多いです。
大事なのは今や漫画を発表してお金にするために、大手出版社に持ち込んでアシとして修行を積んで編集部を通って…というプロセスを踏む必要がないということ。
月収が20万でも、バイトより割が悪くても漫画だけで暮らしていけるならそっちの方がいいじゃないか、という考え方だってアリですからね。